なぜかパリの空の下

国際関係の修士を取ろうと思い立ち、気が付いたらパリにいました。

人生はタイミング

人生はタイミングだな、と思います。

とても素敵なことでも自分がそれを受け止める準備ができていなかったら、たぶんそれは心に響かなかったり、本当に美味しい食事でも、自分の体調や気分が優れなかったら美味しいとは感じられなかったり。

 

逆に、周りの人からのアドバイスが、パズルのピースがきれいにはまるように、胸にすとんと落ちるようなことがあったりする。

そんな経験は何度かあるのですが、進路を悩んでいる時にも一度ありました。

 

留学を考え始めたのは、入社3年目の夏。当時、比較的業務量の多い部署におり、会社と家の往復のような毎日を送っていました。会社も同僚も大好きだったのですが、本当にこれでよかったんだっけ、という問いが頭を擡げた出来事がありました。ただそれは単なる一つのきっかけであって、大きくみれば30歳を前にしてご多分に漏れずという感じかと思います。

ただ、これだけの奉仕(その時はお給料以上、役職で求められている以上の時間的・精神的なコミットメントをしていると思っていました、ちなみに、退職を決めて、それは間違っていたとやっと感じることができました)をするのであれば、本当にやりたいことにつながっていてほしい、登る山を間違えているのではないか、登るのであれば、正しい山を登りたい、と泣き出したいような焦りとともに感じていたことを覚えています。(本当にやりたかったこと、についてはまたいつか書きたいと思います。)

ただ、同時に、これは逃げなのかもしれない、という気持ちもありしばらくウジウジしていたのですが、年上の知り合いと食事をした際に「選択肢を手のうちに揃えると、クリアに考えることができるようになる」というアドバイスをもらいました。(ちなみに、地球の反対側、ウユニ塩湖で出会った女性です。彼女ともう一人一緒に出会った女性も芯の通った美しい女性で、こういう30代になりたいなと思わせてくれる存在です)

 

彼女の一言は、当時の私にはハッと目が覚めるような効果がありました。そこから、1)会社で働き続ける、2)転職をする、3)留学をするという3つの選択肢から、1年半後にどれも選べるように準備をして、すべての選択肢を手の内に揃えてから決断をしようと決めたのが3年目の夏。そして1年半後に留学という選択肢を選びました。

結論を決めずに1年半考える時間があったのは本当によかったなと振り返って思います。仕事を続けるかもしれないので、仕事も頑張ることができたし、今でも前職の会社も同僚も大好きです。(会社愛のコンテストがあれば結構な上位に食い込む自信があります。)自分のことのみを考え続けてもう気持ち悪いくらいの日々でしたが、それでもとことん考えたからこそ、今後何があってもこの決断を後悔することはないと思います。

よく言われるように自分のComfortゾーンから出て挑戦することはとても大切だと思います。まだ挑戦を始めたばかりですが、留学・退職の決断をしただけで、自分の人生観やマインドセットが大きく変わるのを感じました。自分がどれだけ甘えていきてきたか、会社にも家族にも寄りかかって生きてきたか、どれほど守られて生きてきたかということをいやというほど感じています。それはフランスにきてさらに強く感じる今日この頃です。これがわかっただけでも留学にきたかいがある、とさえ思います。(まあ、もう27歳なので、もっと早く気が付けよと自分にツッコミたいところですが、それでも、一生気が付かなかったよりか断然嬉しいです)

セルビア首相の講演会

日本は金木犀が香る頃でしょうか。

パリはぐんと寒さが増し、朝夕の冷え込みは冬すら感じさせます。道行く人々もコートを着込みはじめ、もっと寒くなったらこの人たちは何を着るのかしら、と不思議に思っているところです。

 

そういえば、今は、パリコレ期間中なんですね、キムカーダシアンが強盗にあったニュースを読んで初めて知りました。パリコレの欠片も感じないくらい、課題に埋もれて家と学校を往復する毎日を送っています。

 

この1カ月、日々の授業に関しても、自分自身に関しても多くの気づきがあったのですが、その中でも衝撃度の高かった出来事について、今日は少し。

 

先日はセルビアの首相の講演会を聞きに行ってきました。

 

(さすがグランゼコールというべきか、世界を動かす当事者たちのセミナーやイベントが盛り沢山で、時には同じ日時に興味があるイベントが被ることも。もう少し頑張って調整してよ、というツッコミは封印して、とても贅沢だなと思います。課題文献をほったらかして聞きに行きたいところですが、そうはいかないため、取捨選択をして、参加をしています)

 

セルビアの首相はアレクサンダル・ブチッチといい(ちなみに国家元首はニコリッチ大統領)、46歳で非常に若い首相です。そして背がとても高い(セルビア人クラスメート曰く、背が高かったり、体格がよかったりすることは、セルビアではとても重要な要素だそう)。

 

日本ではセルビアの首相が誰かなんて、おそらくほとんどの人は知らないでしょうし、彼に関してのWikipediaの日本語版はありません。私も、セルビア人のクラスメートからNATOのセルビア空爆についての経験談を聞いていなければ、おそらく参加をしていなかったでしょう。

ただ、私たちが知らないからといって、何かに劣るわけでは全くなく、政治家として、日本の政治家とは比べものにならない次元に身を置いているということを感じた講演会でした。

というのも、セルビアが今直面している課題は、コソボ独立問題、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナとの関係、EU加盟、安全保障(NATO/ロシアとの関係)と、国の大きさを考えると、状況によっては国の将来を劇的に変えてしまうような問題を同時並行で抱えており、且つ、コソボ紛争時のNATOによる空爆は1999年、まだつい最近のことです。質疑応答では、コソボ、ボスニアヘルツェゴビナ、セルビアとバルカン半島の学生が並び、際どい質問を投げかけていました。

ある学生への返答の中でI do not want to hurt your family and I do not want you to hurt my kids(という趣旨のことを)答えていたのですが、この「hurt」は本当の意味での、身体的な意味での「hurt」だということが、平和に慣れ切った私には衝撃的でした。

質問をする方の学生たちにも、真剣という言葉ですらも生ぬるいような、緊迫感が漂っており、もちろん色々な安全保障上の課題や問題があるとはいえども「戦後」に生きる私たち日本人と違って、彼らにとって紛争を含めたこれらのことは全て「現在」の出来事だということ、当たり前ですが、強く感じた講演会でした。

もちろんセルビア国内では首相への賛否両論あるようですが、それでも、それを踏まえたとしても、デリケートな問題を抱える一国の首相が、学生に対して講演会を行い、質疑応答を設けるということは、それが例えイメージ戦略の一環であったとしても、日本的な感覚からすると驚くべきことでした。日本の政治家が同じ状況に置かれたら、果たして同じことができるのか、と思います。

授業が始まって一週間が経ちました。

授業が始まって1週間が経ちました。日々の新しい学びに幸せを感じていますが、それぞれの授業に出た感想としては、学部の延長線、に近いという感覚です。まあ、考えてみたら正規生は5年間コースのただの4年目なので、当たり前に学部の延長だということなのかもしれません。

 

私が通うグランゼコールの正規生は、1,2年はパリもしくは学科により郊外のキャンパスで学び、3年目は全員が海外留学に行き、専門を絞って4年~5年目の修士課程に進学します。

 

みんな当たり前に5年間勉強をしてなんて贅沢な、5年間何を勉強しているのかしら、学部教育の意味って何?くらいに初めは感じましたが、よく考えれば学士課程が4年間である必然性はないわけで、こちらはただ単にそれが5年間だと考えれば意外と腑に落ちます。(正確には学士課程相当は3年間、修士課程相当が2年間ではありますが)

 

「5年間何を勉強しているのかしら」→「4年間何を勉強していたのかしら」、、、そっくりそのまま6年前の自分に問いかけてあげたいですね笑 

 

ただ、次の学期からは多少変わってくる可能性もなきにしもあらず。というのもグランゼコールは、フランスの教育制度の中では、即戦力養成機関という位置づけです(このあたりが大学とは違う所以)。実際に、2年間4学期のうち、3学期目にはインターンシップに行くか卒論を書くかという選択肢が与えられているので、より実践的ではあると思います。授業の内容としても、来学期(2学期目)からはセミナー形式が増える予定。

 

ただ、実践的とうたってはいるものの、もちろんビジネススクールや公共政策系の修士と比べると、全く持って学術的なので要注意です。(そもそも国際関係の修士なので、その二つと比べること自体が間違っているのかもしれませんが)

私自身は学部時代の記憶がすっかり吹き飛んでいるので、この学部の延長線のような内容に非常に助けられています。ただ、学生は皆、ハードワーキングで課される読書量・勉強量は非常に多いので、どうにかくらいついていけるように、工夫をして頑張るのみです。

 

ちなみに、今学期は全部で7クラス34単位履修しています。内容はフランス語と統計手法の授業を除けば、3クラスがレクチャー(大教室)形式、2クラスがセミナー形式の授業。

 

専攻は国際関係の中でも国際安全保障で、且つ集中的に勉強する科目として「ヨーロッパ」と「人権」を選択しており、セミナー形式の授業はそれぞれこの集中科目の授業に当たります。

Sociology of Free Movement(ヨーロッパ)とPromoting Human Rights(人権)という授業で、後者はまだ始まっていないので何ともいえないのですが、前者の授業はヨーロッパの視点からEUの「移動の自由」を勉強できると期待しています。とりあえずこれまでの課題文献では、「移動の自由」が可能なEUが自画自賛されまくっているのですが、ホームグロウンテロやBrexitという激震が走ったこの数年を経て、彼らが今何を思っているか、興味深いところです。

 

ちなみに、20人のクラスでほとんどがEU圏の学生、アジア人は私のみなので、アジア的視点で貢献できるように、改めてアジアの現状を勉強し直しています。(このアジア人の少なさはヨーロッパならではです。)

 

*個人的に目から鱗だったのは、クラスのEU圏の学生たちは、物心ついたころから、EUの一員だったという事実。パスポートなくどこにでも行けて、どこでも勉強ができて、どこでも働けるし、どこにでも住める、それが「当たり前」。EUって新しくできたものだと思っていたけれど、それを試行錯誤して生み出した第一世代の次の世代がすでに大人になってきている。EUを当たり前と思って生まれ育った次世代の彼らは違った価値観を持っていることは明らか。彼らの「国家」の認識がどうなっているのか、探っていきたいと思います。

退職

退職をしました。というのも、出社自体は7月下旬まででしたが、有給を消化していたので、正式には今日まで会社に籍をおいていた形です。

大学を卒業後、早く社会に出たかったため、新卒で入社をし、5年半勤務した後、大学院進学を決め、今日に至ります。

 

社会人経験を経てから学生に戻る、という決断は、(今のところ)いい決断であったと思っています。毎日働いていたからこそ、勉強に専念できるこの贅沢を全身で感じています。純粋に何かを学ぶという行為は、尊く、清く、美しい(と思います、今のところ、だってまだ1週間目ですから)

 

ただ、同時に、驚きだったことは、学生に戻って数日で、働きたい欲がむくむくとわいてきてしまった、ということです。社会とつながっていること、誰かの、何かの役に立てているということはなんて幸せなことだったんだろうと、仕事がある、ということはなんて恵まれていたんだろうと、改めて感じているところです。おそらく次に仕事を始めるときは、仕事ができるという贅沢を全身で感じるんだと思います。(人間って相対的にしか幸せを感じることができない生き物ですね。)

 

ただ、私のそんな気持ちはつゆ知らず、その他の学生は、学部を卒業して当たり前のようにそのまま大学院に進学して来ている人が大多数です。職務経験があったとしてもインターンだとか、ギャップイヤーをとって働いていた人がほとんどというのがこれまでの感覚値です。私の学部は70%が100か国から来ている留学生で、残り30%がフランス人ですが、20人のクラスで年を食っているのは3~5人というところでしょうか。

 

もう少し年上組(Old peopleと我々は自称しています)が多いかと思っていたので、少し残念ではありますが、教育システム、特にヨーロッパの教育システムがそういうものだ、ということのようです。ルクセンブルク人のクラスメートによると、ヨーロッパでは学部だけで社会に出る人は少なく、そのまま大学院進学をする人がほとんどとのこと(限られたエリート層に限られるのかもしれませんので今後詳しくリサーチしてみたいと思います)。ちなみに私の通う大学院はグランゼコールというフランス独特の教育機関に属していますが、ここの正規生(学部から上がってきている学生たち)はいわゆる学部にあたる期間が3年、そして大学院にあたる期間が2年の通算5年のコースを経て卒業していきます。

当たり前ですが国によって高等教育の捉え方が違うということはとても興味深いところです。高等教育とは一体全体なんなのか、何をどう学ぶのか、2年後、自分自身が何を思って卒業することになるのか、楽しみです。

 

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ブログを書いていたら、夜も更けてきました。

最終出社時は、渡仏準備や習い事の試験準備やらで感傷に浸る暇などなく、私って意外とドライなのね、なんて呆れてもいたのですが、その時には感じなかった寂しさがこみあげて来ています。

5年半色々なことがあり、考えることがあったからこそ今パリにいるわけですが、なんて恵まれた社会人生活だったんだろうか、と授業からの帰り道、アンヴァリッド廃兵院(Hôtel des Invalides、名前はおどろおどろしいですが、美しい建築物です、ナポレオンが眠っています)を横目にしみじみと感じました。前職でお世話になった上司や同僚に心から感謝しています。

はじめに

人生で初めてブログを書くことにしました。多くの留学生がそうであるように、この貴重な経験を書き留め、発信したいという気持ちと、そして、留学を検討するにあたって参考にさせてもらった多くの先輩ブログへの感謝を込めて、私も次に続く人たちに何かしらの助けを残せたらと思います。

 

大学院留学でフランスを選ぶ人は、最近でこそ増えたものの多くはありません。だからこそ、分野・滞在形態関わらずフランス在住者、留学経験者の個人の記録はとても有意義で、中には本当に緻密に手続きを説明してくれているブログもあり、隅から隅まで読ませてもらったものです。

 

ただ、一人として同じ人がいないように、全く同じ境遇の人はいませんから、私の記録も、多くの記録の一つとして、何かの参考になればと思います。

 

そして、この混沌とした国際情勢の中で、今このタイミングで各国からの留学生と共に国際関係をヨーロッパの視点で学ぶこの経験を、何かしら発信していけたらと思っています。

 

と、ここまでまじめに書きましたが、まだ右も左もわからぬ中、私自身が何を成し遂げられるかもわかりません、ゆるーい内容も含めて書いていこうと思います。

 

そして三日坊主道を極めている身としては、2年間続けることを目標に、あまり飛ばしすぎず、これまたゆるーく更新をしていこうと思っています。どうぞお付き合いくださいませ。