なぜかパリの空の下

国際関係の修士を取ろうと思い立ち、気が付いたらパリにいました。

「祖国」の味。パリのセルビア人街。

人生で初めて セルビア料理を食べました。

肉々しくて、でも奥深い味わいもちゃんとあって、おいしかった。

 

連れていってくれたセルビア人クラスメート曰く、

彼らのアイデンティティは「西(ヨーロッパ)でもなく、東(トルコ・イスラム)でもない、その中間」というところにあるのだそうですが、

料理もまさにそんな感じで、ギリシャや中東料理にもあるという前菜から始まり、メイン(基本的にはひたすら肉!)も、いわゆる洋食的な雰囲気にトルコ風なスパイスが効いていて、周辺の美味しいものがみんなバルカン半島に集まった!ような豊かな食文化が感じられました。

一緒に行ったチェコ人の友人が、「これは知っている!」もしくは「これはチェコ料理が由来だと思うのよね」というコメントを連発していて、ヨーロッパの食文化がお互いに影響し合ってきた、そんな歴史もかいま見ることができました。

 

場所は、決して治安がいいとはいえない18区の、その中でも北の方、メトロ4番線Simplon駅から歩いて数分。

Simplon通りという、セルビア人街(通り?)に位置しているのですが、通り沿いにはセルビア系床屋、セルビア食品店、そしてセルビア正教会の教会まで揃う充実っぷり。

 

パリには中華街(複数)やユダヤ人街、ベトナム人街、日本料理・韓国料理が集まるOpera周辺等、移民たちのコミュニティがたくさんあるとはいえ、セルビア人街もあることは驚きでした。

というのも、セルビアは北海道程の大きさがあるものの、人口は712万人と東京23区より少なく、その人口でセルビア人街をつくるほどにパリでのコミュニティが発達していることに、彼らの激動の歴史を思わずにはいられません(もちろん移民が多いから絶対にコミュニティをつくるとはいえないので、一概には言えませんが)

 

ただ、お店の名前は「Zavicaj au Pays Natal」。

セルビア語の「Zavičaj」、フランス語の「Pays Natal」はどちらも「祖国」という意味です。パリのセルビア人たちはここで「祖国」の味を通して、故郷を想うんだ、とそんなことを思いました。

 

ちなみに、ネットで調べる限り東京にはセルビア料理レストランはないようで、同じ旧ユーゴの国々の料理もあまり聞いてことがありません。世界の料理はフランス料理や中華料理、インド料理だけじゃないんだぞーと声を大にして言いたい気持ちです。

 

 

*前職の先輩に餞別でもらったパリにある「異邦人たち」のレストランの本。セルビア料理は載っていないけれど、パリの違った(でも、より現実に即した)側面がみられてオススメです。 

パリ、異邦人たちの味 (フィガロブックス)

パリ、異邦人たちの味 (フィガロブックス)

 

 

 ※セルビア・・・面積77,474平方キロメートル、人口712万人(2011年時点)

  東京23区・・・面積627平方キロメートル/人口926万人(2016年時点)

 

出典:外務省 セルビア共和国基礎データ    http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/serbia/data.html

東京都 都市区市町村マップ http://www.metro.tokyo.jp/PROFILE/map_to.htm